クロールの泳ぎが速い子供の特徴

クロール(自由形)は、競泳種目の中で最もスピードが出る泳法として知られています。特に小学生から中学生にかけての年代では、体の成長や運動能力の発達と相まって、泳ぎの上達スピードにも大きな差が出やすいものです。クロールで速く泳げる子供には、いくつかの共通した特徴があります。それは単に「体力がある」や「運動神経が良い」といった一面的な要素だけでなく、技術、身体的素質、精神面、練習への姿勢などが複合的に関係しています。

1. 正しいフォームと水の抵抗を減らす技術

速く泳ぐために最も重要なのは「水の抵抗をいかに減らすか」です。速い子供は、次のようなフォームの特徴を持っています。

  • 水面に近い水平姿勢:体が水中に沈みすぎず、水平に浮かんでいることで、推進力を無駄にしません。
  • 正確なストリームライン姿勢:スタートやターン直後にしっかりと両腕を伸ばし、頭を腕の間に入れることで、水の抵抗を極力減らしています。
  • ヘッドポジションが安定している:頭が上下左右にブレないため、無駄なエネルギーを使わず、バランスが取りやすくなります。

また、ローリング(体の左右の回転)を自然に行いながら、リズミカルに腕を回していくことで、力強いけれど無駄のない泳ぎになります。

2. 効率的なストロークとキック

泳ぎの推進力には、主に腕(ストローク)と足(キック)が関わります。速い子供は以下のような特徴があります。

  • キャッチがうまい:水をとらえる瞬間(キャッチ)で、指先から前腕を使って水をしっかりと押さえ、効果的に水をかいています。
  • プル動作が正確:肘を高く保ったハイエルボーの形を維持し、水を後方に押し出す「プル」がスムーズで無駄がありません。
  • キックが強くて持続性がある:足の甲で水をたたくような、柔らかくもしなやかなキックができています。キックは持久力が求められるため、下半身の筋持久力が重要です。

3. 呼吸のリズムとタイミング

呼吸のタイミングは泳ぎのリズムに直結します。呼吸が乱れるとフォームが崩れ、水の抵抗が増えてしまいます。速い子供は、以下のような呼吸技術を持っています。

  • リズムを崩さない呼吸:1回ごとに規則正しく呼吸を入れ、息が苦しくならないようにしています。
  • 素早く正確な顔の動き:呼吸時には最小限の顔の回転で空気を吸い込み、すぐに顔を戻して泳ぎに集中しています。
  • 両側呼吸が可能:左右どちらでも呼吸できることで、フォームのバランスが良くなり、疲れにくい泳ぎができます。

4. 柔軟性と筋力のバランス

子供のうちは筋力よりも柔軟性が泳ぎに与える影響が大きいといわれます。速い子供には次のような身体的特徴があります。

  • 肩甲骨や股関節の柔軟性が高い:腕や脚の可動域が広く、水を大きくかけたり、強いキックが打てたりします。
  • 体幹が安定している:体幹(胴体部分)の筋力が強いことで、泳ぎの姿勢が崩れにくく、効率的な力の伝達が可能になります。
  • 持久力と瞬発力のバランスが良い:練習で長時間泳げるスタミナと、スタートやラストスパートでの加速力の両方を備えています。

5. 精神面での特徴

技術や体の能力に加えて、精神的な成熟度も非常に重要です。速く泳げる子供は、精神的にも優れた特徴を持っています。

  • 集中力が高い:練習中やレース中に周囲に流されず、自分の泳ぎに集中できる力があります。
  • チャレンジ精神がある:少し難しい練習にも果敢に挑戦し、自分の限界を押し広げる意欲があります。
  • 継続力と忍耐力がある:毎日地道な練習を続けられる粘り強さが、結果的に実力の差になります。
  • 競争心と協調性のバランスが取れている:他の子と切磋琢磨しながらも、仲間を応援し、チームとしての雰囲気を大事にします。

6. 日常生活の習慣

最後に、日常生活の習慣も無視できないポイントです。

  • 規則正しい生活:十分な睡眠や栄養をとることで、体の回復力や成長が促され、良いコンディションを維持できます。
  • 食事のバランス:成長期に必要な栄養をしっかり摂ることで、筋肉や骨の発達がスムーズになります。
  • ケガの予防とストレッチ習慣:柔軟性を保つために、日頃からストレッチを欠かさず、ケガを未然に防ぐ努力をしています。

まとめ

クロールで速く泳げる子供には、「フォームの正確さ」「水のとらえ方」「体の使い方」などの技術的な面に加え、「柔軟性・体幹の強さ」などの身体的特性、さらには「集中力・継続力」といった精神面での優れた素質があります。しかし、どの特徴も先天的なものだけでなく、日々の練習や生活習慣の中で身についていくものです。つまり、正しい方法で継続的に努力すれば、多くの子供が「速く泳げる子」になれる可能性を持っているのです。

水泳は個人競技でありながら、チームの中で学び合い、切磋琢磨することのできるスポーツです。技術やスピードだけでなく、人としての成長も促してくれるこの競技において、子供たちが自信を持ち、楽しみながら速く泳げるようになることが、最も大切なゴールだといえるでしょう。

スワン高槻スイムパーソナルトレーナー 西村講平

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